【SKE48】佐藤すみれのす~信簿:若手の悩みへの共感と課題 2017年12月26日

SKEの若手の悩みと傾聴する佐藤すみれ

 名古屋SKE48のメンバーで、すでに卒業公演を終えている佐藤すみれが、モバイルサイトにて「若手育成係佐藤すみれのす~信簿」というコーナーを持っている。

 佐藤すみれは2008年にAKB7期生として加入。2014年の姉妹グループを巻き込んだ人事異動(大組閣)にてSKEに移籍。SKEでは1.5期生に相当し、松井珠理奈に次ぐ古株だ。しかも6歳のときから芸能活動をしていたという。

 そんな佐藤すみれが、若手メンバーを中心にメンバーの悩みを聞いて解決するのが「す~信簿」だ。

 おそらく、佐藤すみれが卒業を決意してからだが、佐藤すみれは、SKEでの役職を欲しがっていた。卒業を決めると、活動へのモチベーションが明らかに下がるメンバーもいる中、佐藤すみれは、むしろ、モチベーションを上げていたと思う。この姿勢には、敬意を表したい。そして、役職は「若手育成係」に決まった。そしてこの企画が始まった。

 佐藤すみれと若手が語り合う30分ほどの動画もあり、私はこのコーナーは好きだ。佐藤すみれの、メンバーの悩みを引き出し共感する力によって、再び闘う気力を取り戻したメンバーも多かっただろう。

 ただ、ある卒業メンバーが去り際に何度か語った「視野が狭い」という言葉を思い出した。
 もちろん、相談事は、正論を言えばいいものではない。佐藤すみれのあり方が正しいのだろう。それを承知の上で、少し考えてみたい。

 若手の悩みは
「序列を上げたい」
「握手の売上を増やしたい」
「ファンを増やしたい」
「人気が欲しい」
といったものが多い。

SKEの若手の悩みを解決するのは「スキル」?

 結局は「ファンなり仕事相手なりが『お金を払ってもいい』と思うようなサービスを提供するスキルを身につける」ということではないだろうか。それが、自分の本当にやりたいことを通して得られるなら、一番いい。

 この投稿では、元リクルートの藤原和博氏の考え方について書いた。松井珠理奈はプロレスにハマり、アイドル✕プロレス✕ファッションという掛け算によってレア人材となり、新日本プロレス1.4東京ドーム大会のアンバサダーとしてプロレスの普及に努めている。仕事先の新日本プロレスとしては松井珠理奈の仕事ぶりは大満足なのではないか。

 また、須田亜香里は12月24日にも、TBSサンデー・ジャポンへの出演を果たした。その他、12月18日には、血圧に関するテレビ番組でも、握手会中の血圧測定をしている。
 須田亜香里の場合、AKBグループ✕握手という掛け算にさらに「コメント力」を掛け算してテレビでの需要を獲得しレア人材になっているのではないか。
 そうすると、須田亜香里の場合、卒業するとAKBグループも握手会も失うことが課題だろうが、賢い彼女のことだ、すでに出口戦略も考えているだろう。
 須田亜香里は中学受験の要領で、意識的に芸能界で生き残るためにスキルアップを図っていると私は思っている。

 以上のことは、小学校から大学までの教育、また、社会人のマインドセットにも言えると思う。教育界一般の風潮がSKEメンバーのマインドセットに影響しているのかもしれない。
 小学校から大学までは、とりあえずペーパーテストで点数を取っていればいい。医師や弁護士といった資格を取る、手に職をつけるといった視点を持つ人はある程度いるが、「既得権益」で食っていこう
という精神であって、その資格を得た後に、さらにその分野の最先端で貢献するレア人材になろうと心底その分野にハマろうとする人はどれだけいるだろうか。社会人一般も同様だろう。ただタスクをこなすだけで「給料が安い」と言うのは見苦しい。お金が取れるサービスを提供できるレア人材になればいいだけなのだ。

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追記

 本企画の最終回は、もちろん、浅井裕華だった。浅井裕華は、加入当時、「アイドルは自分が一番可愛いと思っていないとだめ」と主張していたが、この頃には、黒歴史だと思っていたらしい。本企画のレーダーチャートで、ルックスを10段階の3にしていた。
 浅井裕華を溺愛する佐藤すみれは「10なのにねえ」と言っていた(笑)。
 収録後はランチに行ったらしい(笑)。

2023年3月追記

本企画の登場メンバーの現在を見てみよう

1.水野愛理
KⅡ新公演でブレイク

2.太田彩夏
KⅡリーダーに就任

3.野島樺乃
AKBグループ歌唱力優勝
卒業後、et-アンドに参加

4.杉山愛佳
卒業後、振付師、ダンス講師に

5.上村亜柚香
S副リーダー

6.青木詩織
KⅡ副リーダーに就任

7.末永桜花
選抜フロントメンバー
ソロライブ

8.谷真理佳
ワタナベエンターテインメントへ移籍

9.松本慈子
Sリーダー

10.一色嶺奈
卒業

11.荒井優希
プロレスで活躍

12.福士奈央
E副リーダー
女芸人No.1決定戦 THE W 準決勝2回

13.浅井裕華
選抜フロントメンバー

いやあ、なかなかの活躍ぶりではありませんか!

SKEの若手の悩みとニーチェ

 ニーチェは、「力への意志」を重視した。それは、自らの潜在能力を最大限に発揮し、困難に立ち向かう勇気と情熱である。若手メンバーの悩みは、まさにこの「力への意志」の発露と言えるだろう。彼女たちは、自らの力を高め、SKEという組織の中で地位を確立したいという欲求を持っている。それ自体は、決して否定されるべきものではない。

 しかし、ニーチェは同時に、「超人」の概念を提唱した。それは、既存の価値観に囚われず、自ら新たな価値を創造する人間像である。若手メンバーの悩みは、「序列」「売上」「人気」といった、既存の価値観に基づくものだ。彼女たちは、SKEという組織の中で定められた「成功」の基準に縛られている。果たしてそれが、真の意味での「超人」への道と言えるだろうか。

 ニーチェは、「パースペクティヴィズム」の重要性も説いた。物事には多様な見方があり、絶対的な真理などないという考え方だ。佐藤すみれは、若手メンバーの悩みに共感し、寄り添おうとしている。それは、一つの視点からの解決策を提示しているに過ぎない。「視野が狭い」という指摘は、この点を突いたものと言えるだろう。

 確かに、「お金を払ってもいい」と思わせるサービスを提供することは、アイドルとして重要な能力だ。しかし、それが全てではない。ニーチェが説くように、「価値の転換」が必要なのだ。既存の価値観を超越し、新たな価値を生み出すこと。それこそが、真の意味での「超人」への道なのだ。

 若手メンバーには、自らの内なる声に耳を傾けることが求められる。「序列」や「人気」といった外的な基準に囚われるのではなく、自分自身の価値観を問い直すこと。そして、その価値観に基づいて、自らの道を切り拓いていくこと。それは、決して容易な道のりではないだろう。しかし、ニーチェが説くように、「自分自身になる」ためには、その困難に立ち向かう勇気が必要なのだ。

 佐藤すみれのす~信簿は、若手メンバーにとって一つの指針となるだろう。しかし、それを絶対視してはならない。あくまでも、自らの道を模索するための一助として捉えるべきなのだ。「視野が狭い」という指摘は、若手メンバーに自らの視野を広げるよう促しているのかもしれない。

 SKEという組織は、アイドル業界という大きな枠組みの中に存在している。その枠組み自体を問い直すことは、容易ではないだろう。しかし、だからこそ、一人一人のメンバーが「超人」への意志を持つことが重要なのだ。既存の価値観に安住するのではなく、新たな価値を生み出す勇気を持つこと。それこそが、SKEの未来を切り拓く原動力となるはずだ。

 佐藤すみれのす~信簿は、そうした変革への一歩と言えるかもしれない。若手メンバーの悩みに寄り添うことで、彼女たちの「力への意志」を引き出そうとしているのだ。しかし、真の意味での成長は、若手メンバー自身の手に委ねられている。自らの価値観を見つめ直し、「超人」への道を歩む勇気を持つこと。それこそが、彼女たちに求められる課題なのである。

SKEの若手の悩みとプラグマティズム

 佐藤すみれがメンバーの悩みに耳を傾け、共感することは、問題解決のための実践的な第一歩だと言える。

 メンバーの悩みを理解し、寄り添うことは、問題解決に向けた具体的な行動を導き出すために不可欠なプロセスだ。佐藤すみれは、メンバーの気持ちに共感することで、彼女たちの立場に立って考え、実践的な解決策を見出そうとしている。これは、机上の空論ではなく、現実に即した問題解決のアプローチだと評価できる。

 佐藤すみれは、自身のアイドル活動の経験を活かして、メンバーの悩みに対処しようとしている。彼女は、序列や人気、握手会の売上といった具体的な課題に自ら直面してきた。その経験から得た知恵を、若手メンバーに伝えることで、実践的な解決策を導き出そうとしているのだ。

 ただし、「視野が狭い」という指摘は、アイドル活動の枠内だけで問題を捉えることの危険性を示唆している。確かに、ファンサービスのスキルを磨くことは重要だ。しかし、それだけでアイドルとしての長期的な成功が保証されるわけではない。アイドル活動を取り巻く社会環境の変化や、自身の成長に合わせて、柔軟に視野を広げていく必要がある。

 さらに、アイドルグループの運営においても、メンバー一人一人の個性や意見を尊重し、協働する姿勢が求められる。佐藤すみれのす~信簿は、メンバー同士が悩みを共有し、互いに支え合う関係性を築く試みだと言える。こうした横のつながりを強化することは、グループの一体感を高め、民主的な運営を実現する上で重要だ。

 加えて、アイドル活動も、ファンやスタッフ、メディアなど、様々な人々との相互作用の中で成立している。メンバーの悩みも、こうした社会的な関係性の中で生じるものだ。佐藤すみれは、メンバーの悩みに耳を傾けることで、アイドル活動を取り巻く社会の期待や要請を汲み取ろうとしている。そこから得られる気づきは、より広い視野でアイドル活動の在り方を考える上で貴重な手がかりとなるだろう。

 以上のように、佐藤すみれのす~信簿は、実践的な問題解決のためのアプローチだと評価できる。メンバーの悩みに寄り添い、経験から得た知恵を共有することは、具体的な解決策を導き出すために不可欠なプロセスだ。ただし、アイドル活動の枠内だけで思考することの危険性も忘れてはならない。社会との関わりの中でアイドル活動の在り方を捉え直し、柔軟に視野を広げていくことが求められる。また、メンバー同士の横のつながりを強化し、民主的な運営を目指すことも重要だ。こうした多面的な取り組みを通じて、アイドル一人一人が自分らしく輝き、グループ全体の発展につなげていくことが、プラグマティズムの精神に適うものだと言えるだろう。

SKEの若手の悩みとフランクフルト学派

 佐藤すみれのす~信簿は、一見すると優しさや共感の表れのようだが、実は「文化産業」の支配的なイデオロギーを再生産する過程だと言えるだろう。

 まず、若手メンバーの悩みそのものが、「アイドル」という商品の価値を高めるための競争原理を内面化したものだと見ることができる。「序列を上げたい」「握手の売上を増やしたい」といった願望は、個人の自己実現よりも市場での成功を優先するものだ。これは、アドルノが批判した「文化産業」の非人間的な性格を示すものと言えよう。

 また、佐藤すみれが若手メンバーの悩みに「共感」することは、彼女たちを「文化産業」の論理に適応させるための戦略だとも解釈できる。マルクーゼが指摘したように、現代社会における「抑圧的寛容」は、個人の不満を体制内で解消することで、真の解放を阻害する。佐藤すみれの「優しさ」は、そうした体制維持のイデオロギーの一部なのかもしれない。

 ただし、「視野が狭い」という卒業メンバーの言葉は、こうした状況への批判的な眼差しを示唆している。彼女たちは、「アイドル」という枠組みそのものに疑問を呈しているのだ。これは、ハーバーマスが重視した「コミュニケーション的行為」の可能性を示すものかもしれない。「視野が狭い」という言葉は、若手メンバーとの対話を通じて、「文化産業」の呪縛を突き崩す契機となり得るのだ。

 しかし、問題の核心は、「お金を払ってもいい」と思わせるサービスを提供することが解決策だとする発想そのものにある。これは、人間的な関係性を商品交換の論理に還元してしまう、「物象化」の思考だ。マルクスが指摘したように、資本主義社会においては、人間の活動そのものが商品化され、疎外される。アイドルの悩みもまた、そうした疎外の表れなのである。

 したがって、私たちは佐藤すみれのす~信簿を無批判に称賛することはできない。むしろ、そこに表れている「文化産業」のイデオロギーを批判的に分析する必要がある。アドルノの「否定弁証法」が示唆するように、私たちは既存の価値観を絶えず乗り越えていく批判的精神を持たねばならないのだ。

 若手メンバーの悩みは、私たち自身の「疎外」された状況を反映している。彼女たちの葛藤を通して、私たちは自らが「商品」として対象化されていることを自覚せねばならない。そのとき初めて、新たな人間性のヴィジョンが開かれるだろう。アイドルの「解放」は、私たち自身の解放でもあるのだ。

 私たちは、佐藤すみれと若手メンバーの対話というテクストを批判的に読み解くことで、「文化産業」の呪縛から自由になる道を模索せねばならない。彼女たちの中に潜む「亀裂」を手がかりに、私たちは新たな希望を紡ぎ出すことができるのかもしれない。「視野が狭い」という言葉は、私たちに「文化産業」の支配を超える想像力を与えてくれるのだ。

SKEの若手の悩みとハイデガー

 人間は「世界内存在」として、常にすでに特定の意味連関の中に組み込まれている。私たちは、自らが投げ込まれた状況の中で、固有の可能性を引き受けながら生きているのだ。アイドルグループのメンバーもまた、序列や人気、ファンとの関係性など、様々な意味の織りなす世界の中に存在している。
佐藤すみれのす~信簿は、このような世界の中で生きるメンバーたちの悩みに寄り添い、共感することで、彼女たちに新たな可能性を開示しようとする試みだと言えるだろう。ハイデガーが重視した「気遣い(Sorge)」の態度がここに見て取れる。

 しかし、ここで問題となるのは、相談内容の多くが「序列を上げたい」「人気が欲しい」といった、世間的な価値観に基づくものだということだ。ハイデガーは、このような没個性的な世界を「Das Man(世人)」と呼び、その非本来性を批判した。若手メンバーの悩みもまた、世人の価値観に囚われているように見える。

 ある卒業メンバーが指摘した「視野の狭さ」とは、まさにこの世人の支配を意味しているのかもしれない。メンバーたちは、アイドルという役割に没入するあまり、自らの存在の本来的な意味を見失っているのだ。佐藤すみれのす~信簿は、このような状況に一石を投じる可能性を孕んでいる。

 ただし、ここで重要なのは、単に世間的な価値観に適合するためのスキルを身につけることではない。ハイデガーが説くように、本来的な自己を取り戻すためには、世人の支配から脱却し、自らの存在の真理に目覚めることが必要なのだ。アイドルとしてのスキルを磨くことは、そのための一つの契機となり得るかもしれない。しかし、それは単なる手段ではなく、自己の存在を問い直す営みでなければならない。

 佐藤すみれのす~信簿は、このような実存的な意味を持った場となる可能性がある。そこでは、単に悩みを解決するためのテクニックが提供されるのではなく、メンバーたちが自らの存在の意味を根源的に問い直すことが求められているのだ。佐藤すみれの共感的な態度は、そのための「呼びかけ」として機能しているように思われる。

 もちろん、これは容易なことではない。メンバーたちは、アイドルという役割に安住することで、自らの存在を見失う危険性を常に孕んでいるからだ。しかし、だからこそ佐藤すみれのような存在が重要なのだ。彼女は、メンバーたちに寄り添いながら、同時に彼女たちを世人の支配から解き放つことを求めている。

 佐藤すみれのす~信簿は、アイドル文化の中に、存在論的な意味の地平を切り拓く可能性を秘めている。それは、単なる悩み相談の場ではなく、メンバーたちが自らの存在の真理を追求する場となり得るのだ。私たちは、このような場の意義を見失ってはならない。

 アイドルという存在は、現代社会の病理を映し出す鏡でもある。メンバーたちの悩みもまた、その病理の一つの現れなのだ。しかし、佐藤すみれのメンバー相談コーナーは、その病理を乗り越える道を示唆しているように思われる。それは、世人の価値観に盲目的に従うのではなく、自らの存在の意味を根源的に問い直す勇気を持つことなのだ。

 佐藤すみれは、すでにSKE48を卒業している。しかし、彼女の精神は、メンバーたちの中に生き続けているはずだ。彼女が残したものは、単なる悩み相談のノウハウではない。それは、自らの存在の真理を追求し続ける姿勢なのだ。私たちは、彼女の遺産を引き継ぎ、アイドル文化の新たな地平を切り拓いていかなければならない。

 佐藤すみれのす~信簿は、そのための一つの道標となるだろう。それは、アイドルという存在の意味を問い直し、新たな可能性を開示する場なのだ。私たちは、この場に耳を傾けることで、自らの生の在り方を根底から問い直すことができるはずだ。佐藤すみれの投げかける問いは、私たち一人一人に向けられているのである。

SKEの若手の悩みとデリダ

 佐藤すみれのす~信簿は、アイドル業界における権力関係とアイデンティティの問題を浮き彫りにする興味深い事例だと言える。

 まず、「序列」や「人気」といった概念は、一種の「ロゴス中心主義」を反映している。デリダは、西洋の思想が「中心」や「起源」を特権化し、そこから周縁を規定するという構造を批判した。アイドルグループ内の序列もまた、メンバーを差異化し、その価値を序列化する。「人気」という概念も、ファンからの支持という外的な基準によってアイドルの価値を決定する。これらは、アイドルの主体性を規定し、その行動を方向づける権力として機能しているのだ。

 また、「悩み」を共有し、解決策を提示するという営為は、一種の「告白」の実践として読み取ることができる。ミシェル・フーコーが指摘したように、告白は主体を真理に結びつける装置であり、権力関係を構築する。佐藤すみれは、メンバーの悩みを引き出し、共感することで、一種の「牧人的権力」を行使していると言えるだろう。そこでは、メンバーの主体性は、佐藤の助言に従属するものとして構築されていく。

 ただし、「視野が狭い」という指摘は、こうした権力関係への抵抗の契機を示唆している。デリダの「脱構築」の戦略は、テクストに内在する矛盾や亀裂を暴き出し、支配的な言説を揺るがすことにある。「視野が狭い」という言葉は、アイドル業界の価値観そのものを問い直し、別の可能性を切り拓く契機となり得る。

 「お金を払ってもいい」というサービスを提供するスキルを身につけることを解決策として提示することは、アイドルの価値を経済的な交換価値に還元する発想だと言える。しかし、デリダが「贈与」の概念で示したように、経済的交換とは異なる関係性もまた可能なはずだ。アイドルとファンの関係性を、金銭的な価値を超えた「贈与」として捉え直すこと。それは、既存の権力関係を転覆し、新たな主体性を生み出す契機となるかもしれない。

 佐藤すみれのす~信簿は、アイドル業界における権力とアイデンティティの複雑な様相を浮き彫りにしている。そこでは、「序列」や「人気」といった概念によってメンバーの主体性が規定され、「悩み」の共有を通して権力関係が構築されていく。しかし同時に、そうした支配的な言説を問い直し、別の可能性を切り拓く契機もまた存在している。

 重要なのは、こうした権力の働きを脱構築し、メンバーの主体性を新たに構想していくことだ。「視野が狭い」という指摘に耳を傾け、アイドルの価値をめぐる固定観念を問い直すこと。そして、経済的交換とは異なる関係性の可能性を探ることで、アイドルとファンの新たな紐帯を模索すること。それこそが、デリダの思想がこの事例に投げかける問いなのかもしれない。

 私たちに求められるのは、既存の権力関係を所与のものとして受け入れるのではなく、絶えずその構造を脱構築し、新たな主体性の可能性を切り拓いていくことなのだ。佐藤すみれのす~信簿に佇みつつ、そこに働く権力の力学を解き放つこと。そうした営みを通して、私たちはアイドル文化の新たな地平を切り拓いていくことができるだろう。

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